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  • インタビュー

O.C.S.D.チャリティーアート展インタビュー「ヤクモタロウ」

神尾なつみ
2023.11.09

11月17日からバーニーズ ニューヨーク銀座本店にて行われる「O.C.S.D.チャリティアート展」
今回は参加アーティスト『ヤクモタロウ』さんにインタビュー!
作品の見どころなどについて聞いてみました。

-これまでのキャリアと、現在のご活動について教えてください。 

ヤクモタロウ:アーティストとして活動を始めたのが、大体7年くらい前だと思います。それから少しづつ活動させていただいて、現在は細々と展示をやりつつ活動しております。

-音楽活動をされてからギャラリストになったとお伺いしましたが…

ヤクモタロウ:20代はずっとバンドをやっていました。小学校くらいから音楽にハマり始めて、高校くらいから本格的にバンドを始めました。たまたまビートルズを聞いて感動して、そこから広がっていったというよくあるパターンです(笑)僕らの中学校の時は丁度バンドブームでした。僕らの世代はTHE BLUE HEARTSとかUNICORNとかバンドブームの盛り上がっていた時代でしたね。ヒップホップはまだなかったので、バンドや楽器をやるっていう雰囲気が強かったです。

-バンドはどのくらいやっていましたか?

ヤクモタロウ:20年くらいやったと思います。

-ギャラリストになったきっかけは?

ヤクモタロウ:親がアート関係の仕事をしていて、昔から親の手伝いをやっていたので、その延長です。親も歳になってきて、アートの仕事が楽しそうだなと思えてきた時期の2000年代くらいから少しずつアートに興味を持ちはじめて、自分でやり始めました。

-ギャラリストはどれくらいやっていますか?

ヤクモタロウ:頻繁に動いてたのは3、4年くらいです。そこからアーティストに転身しました。

-絵はずっと描いていましたか?

ヤクモタロウ:子供の頃から大人に混ざってお絵描き教室に通うような環境だったので、普段からそんなに描いてはいませんでした。音楽や楽器ばっかりやってたので、絵を描くとかはあまりなかったです(笑)

でもアルバムを作るとなるとジャケットとかはこだわっていました。

ジャケットのデザインや絵とかは描いた気がするな、覚えてないですけど(笑)

-本格的に絵を描くようになったのはいつ頃ですか?

ヤクモタロウ:7年くらい前です。

-転身するにあたって不安なことは当時ありましたか?

ヤクモタロウ:個人的には商売としてアートの仕事をやっていた、ギャラリーやディーラーみたいなことをやっていた人がアーティストになるっていうのは結構心配されました。

-アメリカンカルチャーに興味をもったのはいつ頃からですか? 

ヤクモタロウ:なんとなく子供ながらに僕は日本の風土が苦手だったから今もそうだけど大きいとか広いものに憧れを抱いてます。狭いとか小さいのが嫌で。音楽を好きになっていくとどんどんアメリカの古い音楽とかも聞くようになるので、それでカルチャーとかも知っていきました。

乗り物とか電車とか飛行機とか車とかそういうのが好きだったので、洋書の分厚い写真集が家にあって、ものすごい広いところを通ってる電車を遠くから撮ってる写真とか、崖を走ってる電車が映ってて、そのスケール感にときめいてました。

-幼い頃からアメリカンカルチャーがお好きだったんですね。

ヤクモタロウ:とにかく海外志向なんです。バンドをやり始めた頃から「海外に行くぞ」って言ってました。僕らの子供の頃ってアメリカに憧れてましたからみんな。

全員が音楽もそうだし、カルチャーも、みんなアメリカの真似をするというか憧れてたので、そんなのはみんなあるんじゃないですかね。僕らの世代ってサーファーとかハーレーとか、革ジャン着てエンジニアブーツとかアメカジみたいなやつも流行ってたし、その頃追う場所がアメリカしかなかったというか、みんな僕らの世代は影響受けてる気がします。

-作品もアメリカンカルチャーからインスピレーションを受けているんですか?

ヤクモタロウ:あると思います。ヨーロッパが好きな人のタイプと、アメリカが好きな人のタイプってちょっと人の性格やタイプが別れると思うんですけど、僕はあまりヨーロッパなタイプじゃなくて、アメリカに住みたいし、アメリカのカルチャーが好きですね。

-学生時代、進路とかはどのように考えていましたか?

ヤクモタロウ:考えたことはなかったです。小学校か中学校かわからないけど卒業アルバムに「とにかく遊んで暮らす」みたいなことを書いてました(笑)就職とかって人生であんまり考えたことがないんです。就活みたいなのもやったことないです。

-周りのお友達もそういう感じだったんですか?

ヤクモタロウ:高校中退なので、バイトをしていました。そもそもドロップアウトしてたので、学校の友達はそんなにいなかったです。

-今だから話せる失敗談はありますか?

ヤクモタロウ:考えたんですけどあまり覚えてないです。だから反省する間もなく同じ失敗をずっと繰り返してると思います。多すぎて多分麻痺してるんだと思います(笑)

-ヤクモさまが考える自身の強みを教えてください。

ヤクモタロウ:僕が強みとして大事にしてるのは直感力、感覚ですね。感覚でずっと生きているので感覚を失わないように気をつけてます。

-今はどのような感覚でアーティスト活動をされていますか?

ヤクモタロウ:仕事の感覚が100%です。

-絵描きを目指す学生さんにアドバイスをお願いします。

ヤクモタロウ:今すぐ日本を出た方がいいです(笑)もう明日、日本から出た方がいいと思います。僕くらいの歳になると親も高齢になってきたりとか、いろんなしがらみが出てくるので、なかなか簡単に海外に行けなくなってきます。だから若いうちに行った方がいいなっていうのは実感としてあるのと、海外の大学行くとか留学するとかっていう方向性を考えた方がいいと思います。

-今は悩んでしまう学生が多いように感じます。
ご自身が思う、自信を付けられる方法やコツはありますか?

ヤクモタロウ:僕みたいに学校を辞めちゃうとか、海外行っちゃうとかフィールドを変えちゃうっていうのが一番楽かなと思います。集団の中にいないっていうのがいいのかなと思います。僕の世代にはアウトローな人がいっぱいいたけど、今の若い人はあまりいないからな(笑)もし僕の子供が中学生なら学校行かなくていいんじゃない?って言っちゃいますけど。何かで一番を獲れば自信になると思うので、小さいステージで何か一番を獲ればいいんじゃないかな。何百人もいる中で成績も足の速さもって比べ方になるんだったら、小さい中で一番を目指すって積み重ねれば、いいのかなって気がします。とにかく日本にいない方がいいと思う。みんな海外に行った方がいいと思います。アートは特にグローバルな動きになるので、語学力も武器になるんですよね。やっぱり英語を話せる人の方がコミュニケーションが取れるし強いんです。

-若い人や学生がアーティストになるために必要なものは何だと思いますか?

ヤクモタロウ:大人になると現代アートのカテゴリの中で言うと、資金力も大事になってくるんですが、どこを目指すかによっても変わってくるんですよね。若い人だと、日本人らしくない部分を大事にするということですかね。人に気を遣ったり人に迷惑をかけたりっていうのに慣れない方がいいのかなと思います。今の小中学生の親が僕と同じ年代とか、僕よりちょっと上くらいの世代だったりするけど、なんか真面目ですよね、親も。なんか派手に遊んでた世代の筈なんですけど。それが不思議な感じがします、人と同じことをしないってことがいいと思います。

-ヤクモさん自身もそういう部分を意識していましたか?

ヤクモタロウ:意識していたのかもしれないです。

-ギャラリストとしてどのような作品を手に入れたいと思いますか?

ヤクモタロウ:自分の好きなタイプの作品と儲かる作品はまた別だったりするので、そういう意味ではギャラリストという仕事として考えると売れるものが欲しいって思っています。

-ギャラリストという立場ではなかったらどういう作品が欲しいですか?

ヤクモタロウ:ジョナス・ウッドっていう人が好きで、ジョナスウッドの作品が欲しいです。アメリカ人の作家です。生臭いのが好きです。結構前から好きです。

-ジョナス・ウッドさんの影響を受けることはありますか?

ヤクモタロウ:いや、ないと思います。

知らないうちに影響を受けているかもしれないですけど、憧れを持つっていうのはあんまりないです。

僕自身そこまでのめり込まないタイプで、例えば、強烈に草間彌生さんが好きで草間彌生さんっぽい絵を描いたりとか、そういうのはあまりないです。

-ヤクモタロウさんはどういったジャンルのお仕事が多いですか?

ヤクモタロウ:展示が多いですね。

今回のチャリティーアート展のようなクライアントワークは年に1回あるかないかですね。

クライアントワークって個人の人のオーダー作品も含めてクライアントワークって言う人がいますけど、それはちょっと違うんじゃないかと思っています。今のところ個人のオーダーは基本的には受けていません。

-今回のチャリティーアート展はどのような経緯で受けてくださったのですか?

ヤクモタロウ:今回は特にオーダーという意識が全くなかったです。


<今回のチャリティーアート展の作品について>

-今回の「Floppy」は今までの作品とはどのような違いがありますか?また、どのようなメッセージが込められているのですか?

ヤクモタロウ:今までと違いは特にないと思います。

意図としては、フロッピーディスクにファミコンのバグを描いていますが、当時はフロッピーやファミコンが最先端だったけど、こうして時間が経つと古くて若い人が知らないものになっていくので、今あるものもそうなっていくだろうという、ものの見方を伝えたいです。

例えば、スマホってあったよね?となる可能性もあるじゃないですか。

だからそういう気持ちで、広い視野と物事の見方を考え直す機会になったらいいなと思います。

今を生きろではなく、今を生きるな!という感じです。今だけを生きていてもしょうがない。もっと先のことを考えて、今じゃなくて未来を生きろ!という気持ちです。

-今回のテーマでもあり、バーニーズ ニューヨークを表す「TASTE・LUXURY・HUMOR」をどのようにして表現しようと思いましたか? 

ヤクモタロウ:TASTEっていうのはどういう意味なんでしょうね(笑)

-今回はテーマに添った作品を制作したというわけではないということですか?

ヤクモタロウ:僕はテーマに添った作品はやらないです。バーニーズさんには申し訳ないんですけど(笑)
HUMORはなんとなく合ってるなって感じるところもあります。僕は面白いものを作りたいと思っているので、そういうのはすごくあっているなと思います。

-海外だと具体的にどこに行ったらいいですかね?

ヤクモタロウ:アートをやるっていう前提があれば、ヨーロッパとかアメリカが僕は良いと思います。

-作品のこだわりを教えてください。

ヤクモタロウ:今まではプロダクトとしての完成度にこだわっていました。キャンバスの厚みとか正確な線とか色のむらとか、そういう完成度を追及してたんですけど、今はその真逆をいこうとしていて、今のこだわりは手書きです。今まで機械的なものを使いながら活用して作品を作り上げていたけれど、そうすると大きい作品を作るときに結構大変なんです。手で描くにはいくらでもできる。そういうスケール感を海外で頑張ってやっていこうと思っています。

-どういう風に制作していますか?

ヤクモタロウ:今はキャンバスに鉛筆で下書きを描いて、あとは塗ってるだけって感じです。前はきっちり線もマスキングテープ使って真っ直ぐにしたり、ステンレスやエアブラシを使ったり細かくやってたんですけど、最近は手描きが多くなっています。

-日本と海外のアートにはどのような特徴や違いがありますか?

ヤクモタロウ:ジャンルによっても違うんですけど、日本の良さはみんな細かい作業は細かくきっちりやるところだと思います。国柄が出るんだなぁと感じます(笑)逆に海外の人ができないところだから世界で戦う時には武器になりますよね。海外の人はラフで、あまり気にしない。そこじゃない、パワーみたいな感情の部分を感じますよね。

-ヤクモさんは今後サイズの大きい作品を出していきたいと考えていますか?

ヤクモタロウ:そうですね。


-これから挑戦したいことはありますか?

ヤクモタロウ:海外で個展をやるっていうのと、美術館での展示をやりたいです。大きいものをやりたくて、どこまで大きいもので表現できるかを知りたいです。来年はその辺をできればなと思って今から準備しています。あとは、バンドとかDJをやりたいと思っています。

-今は楽器を触っていますか?

ヤクモタロウ:いや、楽器がないんですよ。どっかにあるんですけど。手放したものも多いです。全然ギターも弾けないしドラムも叩けないですけど、もう一回やりたいなと思います。楽器は7年くらい触ってないですね。

-Youtubeについて

YouTube URL:https://www.youtube.com/@artshowjp

ヤクモタロウ:アートの話に特化してるので、学生さんにぜひ見てほしいです。海外のアートフェアのレポートも実際に行って動画を撮って、アートについて深い話もしているので、「ギャラリーとか画廊とかどうしてるんだろう?」とか「絵とかどう展示してるんだろう?」とかアートの勉強になると思います。1人で編集とかやってるので、忙しいとなかなか上げられないですけど… 

-今注目しているアーティストは?

身近なアーティストだとヨコサカタツヤっていうアーティストがいるんですけど。僕はたまたまグループ展とか一緒にやったことあるんですけど、ヨコサカくんは台湾でも個展をやったりとか、今覚醒してる感じがしてすごい。今後すごいことになりそうだなって注目してます。個展も企画力あるし、作品もすごいし台湾のギャラリーもすごいことになってる。

-ご自身のYouTubeチャンネルについて

YouTube:https://www.youtube.com/@artshowjp/videos

ヤクモタロウ:アートの話に特化してるので、学生さんにぜひ見てほしいです。海外のアートフェアのレポートも実際に行って動画を撮って、アートについて深い話もしているので、「ギャラリーとか画廊とかどうしてるんだろう?」とか「絵とかどう展示してるんだろう?」とかアートの勉強になると思います。1人で編集とかやってるので、忙しいとなかなか上げられないですけど… 

‐ありがとうございました!ヤクモタロウさんのYouTubeも是非ご覧ください!


ヤクモタロウ

画商の父と彫金作家の母の間に産まれた環境からアートを身近に育ち、幼少の頃より絵画教室で油絵等を描き始める。中学生からは長年、音楽活動にのめり込み、その頃から海外という大きな世界に憧れを抱く。世界各地のアートオークションやアートフェアを体験。様々な国で世界の生々しい現代アートを体験し、再び本格的に絵を描き始める。作品では主題となるモチーフを実態の中から抽出し、それを繊細な形態でリアルに表現することで、新しい視覚的な価値を前面に押し出し、独特な空間を生み出している。
Instagram:https://www.instagram.com/taroartx/
X(旧Twitter):https://twitter.com/yakumotaro