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  • インタビュー

O.C.S.D.チャリティーアート展インタビュー「チェリ子」

神尾なつみ
2023.11.08

11月17日からバーニーズ ニューヨーク銀座本店にて行われる「O.C.S.D.チャリティアート展」
今回は参加アーティスト『チェリ子』さんにインタビュー!
作品の見どころなどについて聞いてみました。

-これまでのキャリアと現在の活動について教えてください。

チェリ子:美術系の大学を卒業後、ゲーム会社に就職。ゲーム会社では、2Dイラストを担当させていただいて、6年ほど在籍しました。  途中から、フリーランスで頑張ってみようと思い一念発起しました。コロナ前に退職し、フリーランスのイラストレーターとして働き始めました。ゲーム会社在籍時から、MVの制作に関わっていたので、フリーランスのイラストレーターになってからも音楽関係のお仕事を中心に始めました。今では装画*や、キャラクターデザイン等の色々な方面でお仕事をいただいて、イラストレーターとして活動させていただいております。

*本の表紙のためのイラスト(装丁画、ブックカバーイラスト)のこと

– 趣味でイラストを描いていて、そこから今に繋がったと以前伺ったのですが…

チェリ子:以前勤めていたゲーム会社では、今のイラストとは真逆の全く違う女の子以外のものを描いていたのですが、それだけだとフラストレーションが溜まるので(笑)、課外活動的にイラストをずっと続けていました。そちらのイラストが上手いこと軌道にのって、お仕事にすることができました。

-趣味で描かれていた時の作品と今の作品とではスタイルが異なりますか?

チェリ子:趣味の絵の方は女の子中心で描いていました。今よりも割と適当というか、ストレス発散も込みで描いていたので、オリジナルのイラストだけでなく、好きなコンテンツのファンアート描いたりしていました。

作風はあまり変わらないんですけど。今の方が上手なので、前の作品

は恥ずかしいのであまり見せたくないです(笑)

-技術は年数的に上達した等あると思いますが、それはお仕事の中で徐々に…という形ですか?

チェリ子:お仕事をさせていただく中で、自分で想定していない内容を振っていただくことも多いので、そこで描いたことがないものを描くことで技術がどんどん上がっていったかなと思います。あとは、イラストレーターとして1人でやらなきゃいけないというプレッシャーがありながらも、他のイラストレーターの方の影響を受けたり、流行りの絵柄もあるので、そういうのを確実に意識しているところと意識していないところ、どちらも取り入れるような形で成長していっていると思います。

-流行りのものはどういった場面で吸収されることが多いですか。

チェリ子:インターネットを徘徊していて目につくイラストや、有名な方のイラストは

目にすることが多いので、そこで吸収します。今はイラストレーターの個展やグループ展*が多いイメージがあるので、そこに行って情報収集をするようにはしています。

*複数人が寄り集まって一つのギャラリーで展示するスタイルのこと

-今までの活動の中で印象に残っているお仕事はありますか?

チェリ子:お仕事ではないですが、電撃文庫さんが開催している第28回電撃大賞で電撃イラスト大賞を受賞したことです。自分がイラストレーターとしてフリーランスでやってくぞ!と決める前の学生の時に応募して、箸にも棒にもかからない時代があったので、その雪辱戦として応募したら光栄なことに大きい賞をいただけました。自分の中では昔の自分のことを見返すことができ、とても嬉しかった記憶があります。

大人になってから評価をいただくことってあまりないので、イラストレーターの先輩方に総評をいただいた経験は大きいと思っています。今では自分が審査員になることがたまにあるので、貰った側の気持ちをわかっていた方が受賞者の方にコメントさせていただく際に「こうやって言ってあげた方がいいかな」とか「これを言わずに上手い表現ないかな」とかを探す良い機会だと思うことが多いです。イラストレーターとしての仕事ではない

のですが、今の自身の活動には影響が大きかったと思っています。

-コンクールの審査員をされているとのことですが、今の学生さんの作品をみてどう感じますか。

チェリ子:高校生や専門学生が対象のコンクールを見させていただくのですが、待って上手くない?(笑) 私が十代のころはそんなに上手じゃなかったよ、みんなすっごい上手だね!と思います。その上手な中で、何が良い悪いに繋がってくるのかというと、実際に並べた時のパワー感は個人差があって、それを見させていただくのがすごく楽しいです。

今の子達はネットが栄えている分モノを見る機会も多いし、画材を揃えるのも私たちの時より早くなっていると思うのですごいなと思います。そこから順番をつけるのはすごく難しいですが、勢いがあって、輝いている作品を見ると推そうと思います。好きなものやこだわりがあるものを描いてきているのがわかると「この子めちゃめちゃ面白そうだな」とその人物自体に興味がわくことがたまにありますね。

-現在に至るまでの道のりで一貫して大事にしていることがあれば教えていただきたいです。

チェリ子:美術系の大学のデザイン科を卒業したこともあり、自分のうちから溢れているものを出すぞというよりは、ご依頼をいただいて、その意図を汲んで成果物を出すという行為が自分の中では信念として働き方としてずっとあるものです。ご依頼はご依頼主ご自身がイラスト描けないからこそ私にいただくということが多いので、何を伝えたくてどういう表現をして欲しいかを自分の中で噛み砕いてアウトプットするというところは、絶対に外せないなと思っています。

-クライアントさんごとに、ざっくりとしたテーマでいただくことはありますか?

人によって異なるのですが、例えばMVのご依頼だったら、ビジュアル周りに興味がある方だったら具体的なものがあるのでそちらに寄り添うような形で、さらにそれをよりよくするにはどうしたら良いかとご提案させていただくことが多いです。

他には、ビジュアル自体をチェリ子に頼ってきてくれて、お任せしますというようなご依頼もあるので、そういう時は聞かせていただいた内容に合わせてご提案させていただくことがあります。まちまちですが、曲に寄り添うということは外せない、変わらないところです。

-ご提案されるところで何か引き出しに持っておく、インスピレーションというのは流行りのものを追うなどそういったことでしょうか?

チェリ子:流行りなものというよりは絵柄や魅せ方ですね。ネットにイラストをあげることが多いので、ネットにあげた時に見栄えがするかな、とか媒体によってどういう描き方にしようか、というところが主になっています。そういう部分を他の方のイラストを見て学んでいます。アイディアのインスピレーションは、街中で見かけたものや趣味で見つけたものから受けます。どちらかというと現実に則したものからインスピレーションを受けることの方が多く、外に出た方がアイディアが浮かびます。夏は暑かったのでアイディアが全然出てこなかったです(笑) 暑い時に依頼を受けて、外に出られない場合は、頭の中のストックでテーマからいろんな言語を引き出して書き出して、どのアイディアが一番良いかブレインストーミングをして出す感じです。

-チェリ子様の作品は質感が綺麗ですが、特にこだわっている箇所はございますか。

チェリ子:どうしてもベースに女の子を描くという表現はやめられないのですが、ただ可愛いだけではなく、周りに散りばめられているモチーフやテーマにしている女の子以外のモチーフも適当に描かないようにしています。大学に入る前に2年浪人をしていて、デッサンし続けるという地獄の2年間を過ごしていたので、そこでちゃんと質感を表現をしないと落とされるということがあり、今ではそこを評価していただいてると思いますし、それが財産になっています。

-大学の先生にどういう部分を評価されていましたか?先生と仲良かったですか?

チェリ子: 教授の話は本当に申し訳ないのですがあまり聞いていなかったです…(笑) 私はデザイン科でしたが表現方法は自由な学科でしたので、文字をデザインしたりパッケージを作ったりとかはしていなくて、私はイラストをずっと描いていましたし、映像を作る子もいて、やたら大きいものを作っている子もいました。

デザイン科として、与えられたテーマに対してしっかり突き詰めるというところが大きかったです。ある程度イラストで評価をいただけることもあったので、課題に応える力ややらないといけない問題点を解決する能力は、多少はあったのではないかな…?と思います。

-学生の時にもっとこうしておけば良かったと思うことはなんですか?

チェリ子:教授の話をもっと聞いておけば良かったな、と思います。横のつながりはもちろん、縦のつながりは経験があっていろんな業界に携わっている方が先輩には多いので、そういう方ともっとコミュニケーションを取っておけば良かったと思います。昔は結構ただの根暗で…。今はどうしても1人でやなければいけないことが多いので、話さなきゃ、いろんな方と仲良くしておかないと、と念頭に置いていますが、学生時代はなかなかそこまで頭が回らなかったので、若い時にもっといろんな人とコミュニケーション取っておけば良かったなと思います。

-周りで先輩との繋がりでお仕事をしている方はいらっしゃいましたか?

チェリ子:いたと思います。同じ会社に入られる方もいて、代々うちの大学から就職が決まっているところもあったので、そういうところはOGさんやOBさんからのお話を聞きやすかったと思います。割とフリーランスの子もいたので、そういう子たちは、益々先輩や後輩との関係を大事にしていたと思います。ただコミュニケーション能力がなかったので50%くらい想像ですけど(笑)

-会社に勤めずフリーランスで働き続けている方は、アルバイトをしながら絵を描かれていたのですか?

チェリ子:私の後輩は学生の時から働いていたりとか、作品を発表したりとかしていましたね。同期は予備校の先生をしながらが多いですね。



タイトル:「冬のブーケ」

-作品のポイントを教えてください。<※ラフの段階で>

チェリ子:今回のイラストは「ブーケ」をテーマにしました。女の子の襟の部分を包装紙に見立てて、女の子が女の子自身とお花を抱えているというイメージで作成しました。以前も自主制作でブーケをテーマに作成したことがあり、今回もう一度挑戦してみようと思い、描かせていただきました。

バーニーズさんに展示していただくということで、どちらかというと大人っぽい方がいいかなと悩みましたが、自分に頼んでいただいたということと、「O.C.S.D.」の企画であるということは変わらないので、制服っぽいアプローチやニュアンスは変えずに挑戦しようとこのような形になりました。

※ラフ画没案
※採用したデザインのラフ画

-今回の3つのテーマ「TASTE・LUXURY・HUMOR」をどのようにして表現しようと思いましたか?

チェリ子:めちゃめちゃ悩みました。展示していただくということで、一度銀座店さんに伺いましたが、その結果さらに緊張してしまいますます悩みましたね(笑) 察するにブランドさんの独自性やお客様、スタッフの皆様に関しても心を動かすために掲げられたテーマなのではないか、心を豊かにする感情や気持ちをベースに、ただ可愛いだけではなく、描かせていただく内容に気持ちを込めて、自分の得意とするモチーフや無機物の描写をいつも通りしっかり描くことが正解なのではないか、と作成させていただきました。ブーケがテーマですが、整えられているというよりは心臓からお花が伸びていたり女の子の視線だったりとか、躍動していること自体は絶対に必要だと思いました。綺麗にまとめすぎずに見ていただく方に考えてもらう余地を残す絵にしようかな、と制作しております。

-ラフの段階では何%完成されていますか?

チェリ子:7割です。あと3割は私が頑張るだけです(笑)

-ラフから清書に移る段階で違うな、、?と思うことはございますか?

チェリ子:出しているモチーフが、バーニーズ ニューヨークさんの店舗の空気感や展示していただく時期が秋冬だと思うので、その色味感をラフの時点で決めているのでそう多く変わらないことを私は願っています(笑)

-作品を制作していくうえでイメージ通りに行かなかったと思うところはありましたか?

チェリ子:私とイラスト自体はイメージ通りで繋がっていますが、展示していただいた先で求められていたイメージと合うかが少し不安です。並べていただいてからが勝負だと思っています。

-今年のチャリティーアート展は、11月にバーニーズ ニューヨークの銀座本店で行われますが、どのあたりに注目してほしいなどありますか?

チェリ子:私はアーティスト活動自体をたくさんしているわけではないイラストレーターなので、正直言ってアーティストとして作品を置かせていただくにあたってアニメ寄りのイラストがどうマッチするか自分もわかっていない状態です。
お客様と同じくらいの目線で「さてさてチェリ子の作品はどんな感じかしら?」と見に行こうかなと思っています。実際見ていただいてどう感じるかを逆に教えて欲しいと思っています。「どうでしたか?どこがポイントでしたか?」と聞きたいです(笑) 

-アニメっぽいチェリ子さんの作風がまた新鮮に映ってくれたら嬉しいですね。

チェリ子:バーニーズ ニューヨークの店員さんやお客さんにもどう見てもらえるか、ワクワクしつつ大丈夫かな?とドキドキしています。初めて見ていただく方にどう映るか楽しみにしています。

-最後に、今後やりたいことを教えてください。
チェリ子:フリーランスになってから走り続けて来てしまったので丁度一回休憩しようと思っていたところでした。(笑) やりたいこととしては、画集やイラストをまとめる機会をいただけると嬉しいなと思っているのと、これはオサレカンパニーさんに向けてのお願いですが衣装周りやファッション関連はお仕事できたら楽しそうだなと思っています。2次元のイラストは1人でもできるけど、3次元的な展開ができるようなお仕事ができるようになったら嬉しいと思っていますので、そういうお仕事がある方はぜひ私にご連絡ください!

-ありがとうございました!


PROFILE

チェリ子
東京在住イラストレーター。
ゲーム会社を退職後、2020より本格的にフリーランスのイラストレーターとして始動。MVイラストやキャラクターデザイン、広告などを中心に活動中。マジカルミライ2019公式テーマソング「ブレス・ユア・ブレス」MVイラスト、「チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!」MVイラスト、「進研ゼミ」DMイラスト等
X(旧Twitter):https://twitter.com/chie_rico
Instagram:https://www.instagram.com/chie_rico/