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  • インタビュー

教育とプロレスに愛を込めて。

武部 敬俊(LIVERARY)
2019.11.28

部活動が盛んなこの高校で、ひときわ注目を集めるのが、やや強面の森浩先生。自ら立ち上げたレスリング部顧問として国体選手を輩出するほどの実績と、生徒指導担当としての厳しい一面を見せる一方、実は文化祭ではリングを持ち込みプロレスを企画。さらに、自身も覆面レスラーとして登場し、生徒たちをワッと沸かせるエンターテイナーでもある。もちろん、それだけではない森先生独自の生徒たちとの距離感の取り方や、教育とプロレスの関係性について熱く語ってもらった。

ーでは簡単に自己紹介をお願いします。

森浩です。今の学校では9年目になります。学校の中では生徒指導をやってます。例えば、問題行動が起きた時に保護者に説明したり、本人に注意したりする役割ですね。あとはレスリング部の顧問をしていて。僕が立ち上げたんですが、去年はうちの部から国体で3位になった選手も輩出しています。彼はいま、日本体育大学のレスリング部に入って結構、上位で活躍してます。うちに入ってくる生徒はみんなレスリング初心者ばっかりなんですけどね。あと、趣味でプロレスラーもやってます。

ー趣味がプロレスラーってすごいですね(笑)!学校には内緒なんですか?

覆面レスラーなんですが、おかげさまでテレビでも取り上げてもらって、もうみんな知ってますよ(笑)。OPG(俺たちプロレス軍団)っていう団体もやっていて、岡山県の代表もやってます。今、52歳ですけど、試合も現役でバンバン出てます。今朝も生徒と一緒に懸垂してきましたよ。

ー朝から懸垂!(笑)。鷲羽高校の特徴についても教えてもらいたいんですが、先生から見て鷲羽高校の生徒さんたちはどんな子が多い印象ですか?

本校に来て、チャンスを見つけて変わっていくって子が多いんじゃないかなと思います。さっき話した国体で3位になったやつも入ったときは僕が投げ飛ばしてたんですけど、3年間でものすごくデカくなって、今では僕も投げ飛ばされる方です。まあ、みんなかわいい教え子たちですよ。

―ちなみに、その森先生を投げ飛ばしたというその子も初心者からレスリングを始めたんですか?

そうですね。中学まではバスケ部でしたね。全国大会で、初心者スタートの選手が勝ち上がっていくってことは、なかなか稀なことなんで顧問としてはうれしいですね。

ーなぜ彼はそこまで強くなれたんでしょう?

一年生の時に試合で負けたのが悔しかったみたいで、毎晩、家に帰ってから納得のいくまでトレーニングしてたんですよね、一日も欠かさず毎日ですよ。僕自身、高校までバレーをやっていて、大学からレスリングデビューしてそれで大会に出て成績も残せたんですけど、やっぱりそこには陰の努力が必要なんですよね。

ーチャンスを見つけて変わっていく生徒さんが多いってことですが、部活以外の活動をしている子で印象的な生徒さんはいますか?

去年清掃ボランティアのグループを立ち上げた女子生徒がいましたね。彼女が卒業した後も、そのボランティアのグループは継続して続いていますね。

ー清掃ボランティア!学生なのにすごいですね。

あとは3年生の女子で目立つのが好きな、明るい子がいますね。去年の学校のパンフレットの表紙になってる子なんですけど、就職活動もすぐ就職先が決まって、大手自動車メーカーの受付にすぐ受かりましたね。その子も部活動に熱心な子で、バレーボールを真面目に3年間続けていたことも彼女の力になったんだと思います。

ーやっぱり鷲羽高校は、部活動が盛んなんですね。

いやいや、僕としてはもっともっと部活動を活発にしていきたいなと思ってますね。

ー森先生の教育方針で大切にされていることを教えてください。

部活を通して、また学校生活を通して、生徒たちが成長するうえでの何かきっかけを与えられるといいなと思っています。それは「生徒に対して、いかに先生が関わっていけるか」が重要だと思うんですね。

ーなるほど。「関わる」っていうのが先生の教育の方針のキーワードってことですね。

生徒指導をやってるんで、もちろん駄目なことは駄目だって叱るときもあるんですけどね。それ以外のコミュニケーションを常に気にしてとるようにしています。廊下歩きながら、生徒みんなにできるだけ声をかけていきますね。「元気しとるか?」「何しとるんだ?」って感じで。こないだ、ロッカーの上に座ってる生徒がいて、「反省文を書いて次の朝8:15に職員室に来い!1分でも遅れたら反省文二枚に増やすぞ!」つって怒ったんですけどね。そうしたら、ちゃんとピッタリの時間に来るんですよね。「先生、おはようございます」ってね、そしたら「よく来たな〜」って許してやるんですよ。ただただ押さえつけるんじゃなくて「ちゃんとお前らのことを俺は見とるぞ」っていう気持ちで接しています。そういう気持ちの部分を伝えていきたいなとは思ってますね。「生徒たちとちゃんと関わってやってくれ」って他の先生にもお願いしていますよ。生徒に好かれようとか、人気取りをするのではなくてね。

ー単に叱りつけるんじゃなくて、普段からの関係性づくりが大事ってことですね。他に推しの先生っていらっしゃいますか?

末岡先生っていう1年目の若くてイケメンの社会科の先生がいるんですけどね。僕が「いっしょに筋トレしよまい」って誘ったら「はい!」つっていっしょに付き合ってくれるいい後輩ですね。もともとはレスリング部の副顧問をやってもらってたんですけど、今はバトミントン部の顧問をやってますね。大学まで彼は野球をやってたんですけどね、彼が顧問になってからうちのバトミントン部は明らかに変わりましたね。いい方向に向かってますよ。

ー末岡先生とは仲がいいんですね。

そうそう。去年の文化祭で覆面かぶらせてプロレスデビューもさせましたね(笑)。

ー(笑)。

おもろい先生です。

ー文化祭のときはプロレスはどんな感じだったんですか?

去年の文化祭では生徒と試合したんですよ。途中まで自分は実況アナウンサーをやっていて、途中で「今日はシークレットゲストがいます」ってアナウンスしてね、後から覆面被って入場して、あの瞬間はめちゃ盛り上がりましたね。

ーその展開はやばいですね!生徒さんたちの湧いてる姿が浮かびます。

まあ、プロレスってね、誰もが楽しめるもんなんですよね。エンターテイメントとして素晴らしいんですよね。今の時代にこそ、僕はプロレスがもっと必要なんじゃないかと思っていて。昔はテレビでもゴールデンタイムにやってたんですけどね、今ではプロレスを見る機会がどんどん減ってしまったでしょう? 僕らの時代は、みんなテレビでプロレスを見ていて、そこで耐えることや、一生懸命やることの大切さを学んでたと思うんですけどね。真剣にぶつかり合ったり、力がみなぎってくるようなテレビ番組って減ってしまったように思えます。あとは、プロレスを通して「大人になっても楽しめるんだぞ!」っていうのを伝えるってことも大事だと思ってて。子供たちに向かって「夢を持て」とか「人生を楽しめ!」って言っておいて、自分が楽しくなさそうにしてしかめっ面してたらそんな言葉、伝わるわけ無いですよね? 「大人も捨てたもんじゃないぞ」って思わせなきゃ。自分の趣味も仕事も全力で打ち込む姿を見て、いい方向に影響してほしいって思ってます。プロレスも、仕事も、伝えたいことは一緒ですね。その両立ができている今の職業は、自分にとって天職だと思ってますよ。

ーでは最後に受験を控えている中学生たちにメッセージをいただけますか?

高校ってその後の人生に大きく影響すると思うんで、一緒にいる友だちとかにも影響を与えられると思いますしね。我々教師もより魅力的な学校をつくっていかなくてはいけないと思っていますが主役は生徒たちなので。僕たちと、新しい時代の鷲羽高校を作っていくぞ!くらいの気持ちで、一緒にチャレンジしてほしいですね。


岡山県立倉敷鷲羽高等学校

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